ぐりんど Q&A
長田慶太建築要素 ブログより
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先日、竣工したばかりの「宮脇町ぐりんど」。
週末に行われた内覧会には、facebook上での告知だけだったにも関わらず、 天候の悪かった土曜日も含め、300人以上の方が来られ、 また、TV、新聞、経済レポート、等各種メディアが取り上げてくれました。 大変、大変ありがとうございました。
竣工してまだ2週間ですが、空部屋もあと一室となり、もう内部を見れない方も多いかと思われます。 少し、この場を借りて、内覧会の場においても投げかけられました様々な質疑もございましたので、答えてみたいと思います。
●土砂くずれ > 木造とRC造の初歩的な違いも大きいのですが、 充分な地盤調査の上、峰山という本来岩山の強固な地盤を捕まえております。 しっかりした地盤調査の必要のない木造との決定的な違いがここにもある上、 重量の重いRC造を成り立たせるには、充分な検討が必要なのです。 かつ、設計上は予期していなかったのですが、10年以上前にあった「警察の宿舎」の杭が何本も施工途中に出てきましたので、それに基礎を絡める形で現在の「ぐりんど」は成り立っております。設計で見込んだ強度を充分に超えて、そこに建っているということなんです。 ●湿気は? > 土に面する壁部分は、5層からなっております。 土に面する部分から… 排水層→マット状保護層→防水防湿層→コンクリート(厚300) →調湿・地熱空気層→仕上。 となっております。湿度の浸透を居室に伝えてしまうことが無いように配慮しつつ、熱容量の大きなコンクリートに地熱を蓄え、空気層で居室を包み込めるように計画しております。 このことからも若干把握できるでしょう…各種、海外の遺跡みたいな写真があげられておりますが、根本的にモノが違うんです。 室内に入る機会のあった方は、充分に実感できたかと思っております。 内覧会に来られた方からのこの種の質問は非常に少なかったのも一つの成果だと思います… 内部に入ると、土が背後にあるなんて、忘れるぐらいのカラッとした現代的な生活空間が広がっております。 逆に、庭にある木々や植栽の持つ湿度は、町や外部空間、音や風を肌に近づけてくれます。 ●木々の根の問題、屋根に木々が乗っている? > 根本的に外観だけでは、そう思われる方も多いでしょうが、 「連層長屋」と名付けていることからも分かって頂けると思います。 写真ではわかりませんが、この建物は、一棟一棟が離れて建てられています。 木々はそれらの建物の間にそっと植えられております。木の根もコンクリートやアスファルトにて、逃げ場のないように囲ってしまうと、根の逃げ道がなくなる ので、躯体に圧力を加えていきますが、階段状にずれて配置された「ぐりんど」は、大地と連続し、根の逃げ道が様々な方向に用意されているんです。 ●雨漏り > 設計上は防根・防水上も今まで緑化を実践してきた際、最も良かった工法で行っています。 実績と工法に対する信頼性は高いと思っております。 ・・・でも雨漏りしちゃったら、土はぐって、直せます。 ・・・・w。 スコップ持てば、、、w、すぐにアクセスできます。 ●被せている土 > 今物件、屋上緑化という工法上、最も意味のある状態に近いのではないかと思っております。 この設計において、意味ある事柄…「ぐりんど」という造語の意味の中の一つでもある… 「go around」(めぐる)はこの緑化に対するアプローチを意味したものでもあります。 どういう事かと簡単に申しますと、 乗せている土の量も厚い所では40㎝程度もありますが、それが、徐々に建物と建物の隙間に繋がって、その先の本当の大地に繋がっていきます。 よく見かける屋上緑化は、基本的に大地と分断され、ミミズや微生物の移動が起きない。 根の広がりにも限界がある。 ですから、肥料や水分を補給し続けないと植物が健康に育っていけないんです。 大地との連続は、落ち葉や枯草、鳥の糞等の微生物と水分の移動による分解を可能にし、土が随時更新されていきます。種が飛び交い、この先、峰山の環境にのまれていく事でしょう。 雑草だけではない雑木林の足元のような素敵な空間性を10年以上かけて作り上げていければと思っております。 昨年実験しております。水やりはしましたが、経過にはびっくりした次第です。 土の力を感じることでしょう。
●屋根・建物のメンテナンス。 > 屋根に関しては、防水のメンテナンスは土を掘る以外は基本的にかなりアクセスしやすいですし、防水層も直射日光も浴びませんので、結果的に相手は植物ということなのでしょう。 上記の緑化に関する説明にのせて…しばらくは、峰山の環境に近づけて行こうと考えてますので、土も自然の循環に任せ、あまり手を下さず様子を見て行こうと思っております。 しかし そのうち、植栽のメンテナンスは必ず行うことになるでしょう。 しかし、この建物。本来は、5階建ての建物と同規模です。 日々の植栽のメンテナンスは要りますが、外壁等のアクセスのしやすさを考えれば、 中高層マンションの外壁改修や耐震補強の事例を調べれば、 費用ですら歴然かと思われます。
●虫すごそう > ・・・かもね。・・・ 一応きちんと網戸設置してますので、仲よくお付き合いください。w すぐ背後は山ですので、近郊のマンション等のベランダとほぼ状況は変わらないかもしれませんが…一応、虫の寄りつき辛い、LED照明に全灯しております。 --------------------------------------------------------------------------------- 道に分断され、何年もの間、住宅地にもなれず、山にもなれない…放置された傾斜地に 「そっと置いてあげるように」建築を計画しております。元々山だった場所を切り開いて作ったものでもありません。
これから、 自身が考えたこと自身の体で感じながら、「ぐりんど」の成長とは何なのか… …をゆっくり見ながら、よりよい方向も模索していきます。 現在、ほぼすべての部屋が竣工2週間にして埋ろうとしております…。 ここで、「ぐりんど」にお付き合い 頂く入居者の皆様。 この場を借りて、温かく見守って頂けることに感謝をお伝えいたします。 また、入居をご検討の皆様。どうかご参考に。 ひとつ情報を添えておくとすると・・・ この建物。工期が2年半もかかっております。このことからも分かって頂けるでしょうか…。 下層の方の「木」のプランは出来て間もないですが、上層の「森」「林」のプランに関しては、2年近い時間を今の条件よりも不安定な環境下で過ごしております。 3度の冬。2度の夏。 雪も降り、何度かの台風の直撃、広島が経験した夏の豪雨も経験してきました。
2年という歳月を無駄にすることなく、躯体や雨水の状況等も観察し様々な足し算、引き算を繰り返して、今の竣工を向えております。
施工会社の努力の賜物でもあります。ただ、 一生懸命考えて計画・施工しておりますが、多少の不具合も出る事でしょう。 設計・施工会社・管理会社みんなで協力し、充分なアフターに努めて参りますので、どうぞよろしくお願い致します。
ようやく、「ぐりんど」が社会や町、峰山と人々と関係をもち、歩き出そうとしております。 温かく見守って頂ければ幸いです。
長田慶太建築要素 長田